私の場合、乳がんになった時に一番最初に心配したのは仕事のことでした。
仕事は私のアイデンティティの核になるものです。
なので、今の仕事、キャリアを奪われたくなかったのです。
幸いにもステージⅡのリンパへの転移なし。
術後は、点滴型の抗がん剤でなく服用タイプの薬物療法で
治療していけることがわかりほっとしました。
唯一、術後の数十回に及ぶ放射線治療を
働きながら続けていけるかが課題になりました。
術前には平日毎日、計30回の放射線照射が必要になると説明されたのです。
メインホスピタルには放射線治療科がありませんでしたので
他院に紹介状を書いてもらい、そこで受けることになります。
メインホスピタルの関連病院は、自宅・職場ともにアクセスがよくなく
なんとか通いやすい場所にある病院を見つけなければ・・焦りました。
ネットで職場から一番アクセスのいい総合病院を探し
放射線治療科のページを確認すると・・・
なんと診療時間外の照射にも対応できる。
仕事との両立を応援します・・・と書かれてありました。
神の助け! そう思いました。
退社後、職場の前からタクシーに乗ると
10分足らずで病院に着きます。
この情報を得た私は安心して手術に向かうことができました。
術後主治医は紹介状を書いてくれ、
その病院で初診を受けると「17:30からの枠が一週間後に空く」と言われ
すべてが予定通りに進んでいきました。
術後右胸がチクチクしたり、小走りすると胸が痛いなど
違和感が残りましたが、面談、パソコンでの報告書の作成をメインとする
私の仕事には差しさわりがなく、金曜日まで働いて翌月曜日に手術入院。
土曜日に退院して翌月曜日に出勤。
仕事はインフルエンザで休み、職場には病気のことを話さずに過ごせました。
「仕事と療養を両立させる」。
キャリアの世界では、これが主流のように言われますが
実際はいろいろな問題があり、退職に追い込まれることも多いと思います。
周囲の理解を得て・・というのは余程余裕があり、知的水準が高い企業で
何年かのキャリアを積んだ人に限ると思うのです。
派遣など有期雇用ではかなり難しい。
だから、可能であれば仕事に差しさわりがないように
乗り切ることがいいと考えています。
もちろん、術後に課題を抱え、身体が思うようにならない場合もあります。
でも、辞める選択を急がず、なんとか続けていく道を探した方がいいと思います。
がんは再発の可能性を抱えています。
でも、仕事を持ち、自分の役割や社会とつながっていることで
自分を支えていくことができます。
なにもしていないと、かえって不安が募ります。
40年前専業主婦だった母が術後再発の不安を抱えながら
パートをしたり、習い事をして気持ちを紛らわせていた姿を今も覚えています。
ちょうど子育ての手が離れ、空の巣症候群のような状態の時に
乳がんになり、どんなに不安を抱えたかと、今になって気づきました。
その母の姿が、今の自分の生き方につながっていてます。
